神田理事

「より添いとたい話の診療所」は、患者さんとの対話を第一に考え、実践する訪問診療専門の診療所です。ひきこもりや精神的疾患、知的障害、身体障碍等で通院できない方を対象に、対話を中心とした治療を提供することで、他医療機関と連携し、患者様が自ら通院していただくようにサポートし、さらには社会復帰できるようになるまで支援します。
まずは、自らから医療機関に通院できるようにするのが目的です。

 特に精神疾患は、なかなか治らないのではないか、また治療のために向精神薬が大量に投与されるのではないかというイメージを持たれている方もいるかもしれません。私たちの診療所では、薬を最小限に抑えながら、まずは対話による治療を行います。具体的には、
ヨーロッパ発祥(オープン ダイアローグ)を元に、私どもが3年がかりで日本版に再構築した新しい取り組みである、「Open Buzz Dialogue(オープン バズ ダイアローグ)」という医師だけでの対話ではなく超職種チームでの対話を重要視した治療を用いていることが大きな特徴です。

 Buzz(バズ)は、英語で蜂などがブンブンいうという意味ですが、患者さんとの対話において、私たちは、患者さんと医療従事者がお互いに心の内をさらけ出して、文字通り「互いにブンブン言い合える」関係の構築を大切にしています。それによって、互いに信頼関係を築きながら、心の安定を図り、「外に出よう」「社会復帰したい」という気持ちを引き出すのです。医療スタッフ側は、医師だけではなく、看護師、作業療法士、精神保健福祉士、薬剤師、さらには弁護士、深層心理学者もおり、皆で協力しながら患者さんをサポートします。対話中心の治療は、当然ながら時間もかかります。そのため、一日に訪問する患者さんは、6人を上限とし、一人ひとりにじっくり時間をかけて対応しています。

 こうした医療を提供するために必要なのは、「人間らしさ」を持つ医師です。経歴、学歴、肩書などは一切問わず、何よりも「人間性」を重要視しています。「人間らしさ」があるからこそ、患者さんの気持ちに寄り添うことができますし、より人の心の内がわかる理解者として、患者さんと向き合うことができるのではないでしょうか。当診療所は、医師に対するサポートや、医師本人の社会復帰にも力を入れています。「Open Buzz Dialogue」は、患者さんに対してだけでなく、スタッフ間のセッションにも導入されており、チーム医療を超えた連携を大切にしているのです。